漢服の基礎知識

漢服の種類  時代編

 お読みいただきありがとうございます。漢服大好きでネットショッピングを延々みているぬぃといいます。

 この記事では、漢服が時代ごとにどういうスタイルに変わっていったかを簡単に感じていただけるように解説してみます(わたしがメインで詳しいのは、明制と新中式ファッションなので、買ったことない様式のもあります……。でも、ネットでみているので一通りの特徴は知っています)。

「漢服ってそもそもチャイナ服とどう違うの?」「着物と漢服の違いって何?」という方もいると思うのですが、各時代ごとの様式をざっくりと感じて、その中で好きなスタイルをみつけていただけたら幸いです。
(同じ着物でも、純和風の柄だったり、大正ロマン的なコーデ、さらには現代の和洋折衷コーデなどかなり時代によって色々な着こなしができる感覚に近いです)

 ちなみに、“漢服”といった場合、中国の伝統的なファッションということで、漢代のものや六朝期のものなども含まれてしまうのですが、ネットで売っているスタイルが唐以降のものなので、唐から解説していきます。

唐制

 まず紹介するのは唐代の漢服です(リンク先では写真がみられます)

https://m.sohu.com/a/461424107_121053779/?pvid=000115_3w_a

唐風の漢服も、実はあまり売っている数は多くはないのですが、一応のせておきます。

 まず、思うのは日本の奈良時代のファッションにかなり似ていることです。この時期は、褙子(背子)という短いベスト、披帛(奈良時代の日本で「領巾:ひれ」)という細長いスカーフが特徴的です。あと、スカートが胸くらいまで上げることがあります。

 生地の質感としては、ところどころ厚みのある生地もありますが、全体的に靡くような素材感が多いです。色彩は明麗で対比のきいたイメージです。

宋制

 つづいて、宋代のスタイルです。

https://m.sohu.com/a/679504423_121687416/?pvid=000115_3w_a

 一言でいうと、「さらさらひらひら」しているのが宋制だと思っていれば大丈夫です。

 軽くて薄い、透明感のある生地をかさねてつくられるコーデが特徴的で、繊麗ですらりと細長いシルエットになります。あと、心なしか色彩も淡いものが多いです。

 唐制との違いをはっきりいうのは難しいのですが、唐制ははっきりあでやかな色合いで、きゅっと絞りがきいている感じがあって、宋制は澄んだ色合いで水がはらはら流れ落ちるような感じです。唐制・宋制ともに首まわりが大きく開いているのも特徴です。

 あと、物によっては裾を引きずるほど長いものがあったりします。

明制

 このブログで紹介しているのは、明制漢服です(ここだけやはり解説が詳しくなってしまったのは否めない……)

https://www.weili.tv/information/2023/06/23/archives/14694

 生地は厚めで、光沢感と織柄のある生地(緞子)がよく使われます。これがうっとりするほど美しいです笑。ちなみに、当時の日本にも実はかなり輸入されていて、能の衣装や茶道の名物裂(茶器を入れる袋)は、明製の緞子だったりします。

 あと、首まわりがきゅっと閉まります。襟の形として、中国風ファッションでイメージされる立襟に金属製のボタンがつくのもこの時期です(明制漢服の中には、着物のような襟・中華風の立襟・道行コートのような襟の三種があります)。

 重厚で濃烈な色彩感覚は、よくイメージされる極彩色の中国っぽい印象だと思います。スカートは、それまでの時期に比べてプリーツがしっかり入っていて硬いです。

清代

 清代(満州族時代のもの)を漢服に含めるか微妙な面もあるらしいのですが、ネットで調べると漢服として売っていることもけっこうあるので、ここではあわせて紹介していきます。

https://www.ipeipai.com/sys-nd/11.html

 特徴としては、明制よりも少しゆったりとしていて清雅な色調のものが多いです。光沢感は控えめで、袖口が開いていて植物柄の刺繍が入っていることが多いです。襟の形は、立ち襟or丸襟になっていて、ボタンは明代の金属製からいわゆる「チャイナボタン」のようなデザインになります。

 明制が絢爛華美な感じだとしたら、清代のファッションは幽雅で落ち着いた色合いだと思ってください。あと、差し色的に黒が入ることが多い。唐・宋の頃は透き通った素材が多くて、明・清になると厚みのある生地になります。

 江戸時代に松前藩から入ってきていた“蝦夷錦”は、清朝のファッションがアムール川あたりを経て、北海道から松前まで運ばれてきたもので、そのエキゾチックな雲龍模様は日本でも好まれていました。

新中式

 これは「新しい中国式」という意味で、ファッションだけでなくインテリアや茶館(カフェ)などのジャンルでもあったりします。雰囲気としては、中国の伝統的なデザインと現代風のものを組み合わせた感じだと思ってください。

https://www.thepaper.cn/newsDetail_forward_25806529

 ファッションにおいては、中国風のデザインと洋装を混ぜたようなスタイルです。上のリンク先でいうと、中国風の織模様が入っていたり、光沢のある生地が使われているコート、もしくは襟の形が立ち襟になっていたり、ボタンのデザインが中国風だったりというディティールが特徴です。

 実はこういうスタイルは民国期に一度生まれていて、中国風の立ち襟の上着と洋装のスカートのような例があったりしました(日本の大正時代のファッションも似たような面があって、着物&ブーツみたいなものです)。

 現代の洋装の中に、自然に取り入れやすいのは新中式ファッションだと思うので、いきなり漢服をすべて着るのはハードルが高いという人は、とりあえず新中式のジャケットだけ買ってみる……などでも十分個性的な装いが楽しめます。

ざっくりいうと

 というわけで、色々と細かい特徴も書いてきましたが、簡単にまとめると

  • 唐制:色彩豊かでひらひらと靡く感じ。日本の天平時代っぽい
  • 宋制:清冷で水の流れるような透明感がある。さらさらしている
  • 明制:重厚な生地と濃密な色彩。緞子の織模様と光沢感がある
  • 清代:ややゆったりとしていて落ち着いた色合い。生地感は柔らかい
  • 新中式:洋装の中に中国的な生地や柄、ディティールを混ぜたもの

みたいになります。このブログでは、わたしの購入経験がある明制と新中式の話が多くなりますが、それ以外の様式も部分的に取り入れたりも全然ありなので、いいと思うものがあったらぜひみなさんも改良してみたりしてください。

ABOUT ME
nui
漢服愛好家。 埼玉の北のほうに棲んでます。漢服の魅力やコーデのつくり方、楽しみ方などを書いています。皆さまにも、上質で優雅なファッションで幸せな時間を楽しんでいただけるきっかけになったら嬉しいです。 クラシカルで貴族のようで、きちんと綺麗なファッションが大好きです。