漢服の基礎知識

漢服のお手入れ

 漢服愛好家のぬぃです。

 この記事では、みなさんが何となく気になっていることとして、漢服のお手入れについて書いていきます。漢服を買ってみたいけど、毎回クリーニングに出さないとなのかな……と不安に思っている方、きれいなファッションには憧れるけどお手入れが大変なのは困るという方の参考になったら嬉しいです。

 さらに、お手入れが簡単になるようなふだんからも心がけとして、どのようなコーデをつくると汚さずに着られるかということについてもお話していきます。これを読んで、みなさんがより気軽に漢服や新中式ファッションを楽しめるきっかけになったら幸いです。

まずは洗濯表示をチェック

  まず、洗濯表示が通販サイトだったり洗濯タグについている(ことが多い)ので、迷ったらそちらを確認しておきます。大体の場合は、30℃くらいの低温でやさしく手洗いしてください、ということが多いです。

 干し方は平干し推奨だったり吊るしても大丈夫だったりが混在しています。原則として、新中式のシャツ・ブラウスなど軽い生地は吊るしてもOKですが、重い生地の上衣は型崩れを防ぐために平干しが多いです。

 それ以外にも、つけ置きや漂白NG、アイロンは低温のみ、色落ちがあるので濃いものと淡いものは分けて洗う……などが全体として共通している印象です(メーカーごとに微差はあるけど)。

 ただ、ときおり洗濯タグがついてないものもあるので、そういうときはやはり「ぬるま湯でやさしく手洗い・つけ置き漂白NG・アイロンは弱め」を意識して洗っていただければ大丈夫だと思います。

 ……という話はなんとなくわかると思うのですが、毎回洗うのも大変だし、もっと気軽に着てみたいので、私なりに考えた簡単にできるお手入れの方法を紹介していきます。

スチームアイロンでシュッ

 まず、漢服の日常的なお手入れにはスチームアイロンが定番です。

 漢服は分厚い生地のものが多いので、洗うのもけっこう大変ですが、スチームアイロンを使えば汗を蒸発させたり、殺菌や消臭の効果もあります。なので、脇だったり首まわりだったりの汗が気になる場所を重点的にスチームで当てていきます。

 汗の汚れは、蒸気をかけると水にとけて一緒に蒸発していきます。なので、少し汗がついたかも……と思ったら、まずはスチームアイロンです。さらに、汗の匂いの原因になる菌の繁殖も、蒸気の熱で除菌できるので、その点でもすごくおすすめです。

 また、外に出たときに電車に乗ったりしますが、外の汚れがついたまま収納するのに抵抗がある……というときにも、スチームで除菌しておくと安心です。私は馬面裙の下のほうも階段などに当たってしまったかもしれないので、同じくスチームでシュッとしてから毎回しまってます。

 ちなみに、スチームを当てたあとは、乾いたようにみえても湿気が残っていることがあるので、一日ほど広げて蒸発させてからしまうようにしています。このときも漢服は畳まずに広げて置いておきます(ハンガーだったり机やいすにかけておきます)

 というわけで、外から帰ったら汚れが気になるところには、とりあえずスチームアイロンで蒸気をあてて、その後は一日くらい息を抜く感じです。漢服のふだんのお手入れはこのくらいでも大丈夫なので、ふだん使いも十分できます。

漢服の収納法

 つづいて、漢服の収納についてなのですが、これはおそらく「畳んで収納派」と「掛けて収納派」にわかれると思います。

 私は畳んで収納派なのですが、ネットでみていると掛けて収納している人もいるので、どちらでも問題なしだと思ってください。

 まずは畳んで収納派についてです。漢服はだいたい通販で買うと畳んで送られてくるので、そのときの折り目のとおりにたたんでいけば大丈夫です。

 上衣は基本的にどれも畳み方は一緒です。まずは襟をあわせてボタンや紐を留めて、形がくずれないようにします。そのまま裏返して、元の折り目に合わせながら、お袖を三分するようにたたみます。さらに縦にたたむのですが、短い上衣は半分、長い上衣は三つに折って完成です。

 こちらの写真は、前でボタンをすべて留めて、裏返してお袖を片方だけ畳んだ様子です。折り目にあわせてお袖をさらに畳んだら、縦に2.5分するようにたたんで完成です(なぜ2.5等分なのかは、折り目をみるとわかると思います。この辺はけっこう曖昧なので、そのときによって変わります)

 馬面裙はもともと送られてきたときの畳み方にかなり違いがあります。なので、変なシワを増やさないためにも、もともとの折り目に合わせるように畳むのがおすすめです。

 基本的な馬面裙の畳み方として、まずはプリーツをすべて揃えます。そして、プリーツの方向にそって三つにたたんで、着用したときのような形をつくります(さらに半分に折ることもあります)。今度はそれを三段折りor四段折りしていくときれいに畳めます。紐は半端に垂れ出ることもありますが、そこはなんとなくで大丈夫です。

 こちらは着用時のように、プリーツ方向にあわせて三つにたたんだ様子です。この馬面裙は真ん中にさらに一つ折り目があるので、もう一回半分におります。

 上の写真の状態から、さらに半分に細くたたんだものを、今度は三つにたたんでいきます。紐はなんとなくきれいにまとまっていればOKです。

 吊るす派の方は、上衣用には肩に厚みのあるハンガー、馬面裙用には挟めるタイプのボトム用ハンガーを用意します。上衣はボタンや紐を閉じた状態でふつうに掛ければOKです(ボタンをかけないと前の生地が型崩れしてしまうので)。

 馬面裙は同じくプリーツをきれいにそろえて、さらに着用時のように縦に三つに折って、腰のところを挟みます。

 シワになりづらいのは吊るすタイプですが、保管場所が取れないという方は全然畳んでも大丈夫です。

汚さないコーデをつくる

 上に書いたような話でしたらなんとなく想像できる方もいると思うのですが、個人的におすすめなのは“漢服を汚さないコーデを考える”ことだったりします。お手入れも手間がかからない上に、いくつもの工程を経て装いをととのえることは、すごく高貴で幸せな気持ちになれます。

 たとえば、襟まわりに汗やファンデーションがつくのが気になる場合でしたら、高い襟のシャツ・ブラウスを着るorスカーフを半衿のように入れると汚れる心配はなくなります。

 もっとも、本来の漢服には中に洋装を入れたり、スカーフを混ぜるコーデはないのですが、シャツ・ブラウスを混ぜると和洋折衷っぽくなったり、スカーフを挟むと重ね襟を入れたように色味の華やかさが増して、漢服だけでは出せない奥行き感が上品です

 漢服の一つの難点として、上衣のはなやかな模様が楽しめる一方で、その中に着ているものが隠れてしまうということがあるのですが、お首元からみえる襟やスカーフの重ね着感は、細部にも丁寧なつくり込みが入って、優雅な織物にたくさんつつまれている喜びが幾重にも重なります(書いていて小っ恥ずかしいけど、本当に幸せなのでぜひ堪能してください笑)

 シャツ・ブラウスも、直接に汗がつかないようにできるので、漢服をきれいに着ることにつながります。馬面裙も、タイツやペチコート、ハイソックスなどがあると安心です。

 というわけで、漢服をきれいに着るには、中に洋装ミックスで汚れない&高貴な重ね着コーデをつくるとおすすめです。

雨の日コーデをつくる

 こちらも一つの問題だと思います。馬面裙のすそが長いと、雨がはねて泥がついたり、たっぷりしたお袖が濡れてしまっては大変なので、雨の日用のコーデをいくつか作っておくのがおすすめです。

 たとえば、わたしの例ですが、雨の日はあえて新中式ファッション寄りにしています。ボトムはワイドパンツで馬面裙のシルエットを再現したような形にして、上衣は新中式のジャケットを羽織るor一枚でもコーデが完成するシャツやベストなどコンパクトな形で柄のあるものをもっておく……等です。

 もしくは、雨の日の特権として、傘をコーデに活かすというのもありです。傘をあえて派手な柄にしておくと、シャツやベストなどの柄や色と傘の模様がリンクして、雨すら味方につけたような装いが楽しめます。

 中国の傘は、晴雨兼用になっていて、しかも外側にお花だったり植物柄だったりが描かれているものがあり、日傘としても漢服の模様とよく馴染みます。

 雨の日って、全体的に色調が沈みがちだったり、汚れないためのコーデになりがちですが、普段はあえてやらないような方向でのおしゃれができるという点ではむしろ魅力的だと思います。なので、漢服を汚したくない雨の日は、お手入れのしやすい新中式ファッションにしたり、傘とのつながりを考えたコーデをつくってみると楽しいと思います。

まとめ

 というわけで、今回の記事の内容をまとめてみるとこんな感じです。

  • 漢服のお手入れは、日常的にはスチームアイロンで気になるところをシュッとしてあげればOK。首まわりや脇、電車で座った場合は背中や腰、馬面裙の裾などを重点的にするのがおすすめ
  • もし洗うときは、洗濯表示を参考にしてください。洗濯タグor通販サイトなどに書いてあることが多いです。原則として「ぬるま湯でやさしく手洗い」が基本です。
  • 個人的には、漢服を汚さないコーデをつくるのがおすすめ。中にシャツ・ブラウスなどを着て直接肌にふれないようにする、首まわりにはスカーフを挟んであげるなどのことを意識すると、幾重にもかさなった襟元が優雅で高貴です(たくさん重ね着をできる富貴な幸せを堪能できます)
  • 雨の日は、一枚でもコーデが完成するシャツやベストなどの新中式ファッションがおすすめ。傘の色や模様をもとにコーデを組んでみると、ふだんとは違った趣きも楽しめます。

 あと、どんなコーデをするか、どんなお手入れをするかよりももっと大事なこととして、“着ているものを汚さない所作を心がける”というものがあります。

 たとえば、汁がはねるようなものはなるべく食べない、泥がはねるような場所を歩かない、長い袖がつかないように片方の手でおさえる、馬面裙の裾を引きずらないように意識する、汗をかかないように静かに動く、日頃から雨が降ったりしたときのことを考えて装う……みたいなことを大切にすると、漢服の雰囲気に似合うような身のこなしになると思います。

 似合う装いというのは、きっと外見やお顔だけでなく、内側からの雰囲気やふるまい・所作などが着ているものと似合っている、ということでもあると思うので、上品で丁寧な日々のすごし方がにじみ出るような装いだったり、心づかいが感じられるのが理想です。

 漢服のお手入れは大事だけど、それ以上に漢服を丁寧に大切に扱うことだったり、汚さない装いやふるまいを心がけてあげるのが、もっとも良いお手入れだと思います。漢服って、きらきらしていて重みがあって、着る宝石みたいだなぁ……といつも思っているので、宝物をあつかうように大切にしてあげてください♪

 そのために雨の日用のコーデだったり、汚れなくておしゃれな着こなしを考えるのも、大きな喜びにできるので、そういう面もふくめて皆さんも色々と楽しんでいただければ嬉しいです。お読みいただきありがとうございました。

ABOUT ME
nui
漢服愛好家。 埼玉の北のほうに棲んでます。漢服の魅力やコーデのつくり方、楽しみ方などを書いています。皆さまにも、上質で優雅なファッションで幸せな時間を楽しんでいただけるきっかけになったら嬉しいです。 クラシカルで貴族のようで、きちんと綺麗なファッションが大好きです。